自国ドイツの映画からではなく、フランスのヌーヴェルヴァーグ、とりわけジャン=リュック・ゴダールから影響を受けた映画監督ルドルフ・トーメは、語りにおける自身の姿勢を「アイロニーと呼ぶべき近さと遠さの混合」と話している。以前映画評論家としても活動していたトーメは、芸術上のロールモデルとしてアメリカの映画監督ハワード・ホークス (暗黒街の顔役)の名を挙げている。直線的で、シンプルな語りと強い女性像がその理由である。トーメの「紅い太陽」で女優たちは、男たちが口を挟むこともできないユートピアを作りあげることを試みる。トーメの映画の中の女性たちは、現実感覚と合理的な振る舞いゆえに男性よりも強い存在として描かれている。さまざまな愛の形も彼の作品の中心的な要素だ。政治的なアプローチが主流だった60年代後半、挑発的なほどにエンターテインメント性の高いトーメの映画は、社会批判的な作家主義映画とは対照的であった。
ルドルフ・トーメと日本の映画評論家渋谷哲也は対談の中で、1960年代から今日のトーメの映画の不変と変化について議論する。
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