ヴィラ鴨川は、数百年に及ぶ伝統の中にあります。そもそもアーティスト・イン・レジデンスの歴史は1666年にまで遡ります。当時、初めてアーティストの外国滞在のための奨学金を授与したのはフランス人でした。「ローマ賞」(Prix de Rome)の受賞により、フランスの画家、銅版画家、彫刻家、また、後には建築家や作曲家が、ローマで数年間滞在できるようになりました。賞の運営者は1648年に創設された王立絵画彫刻アカデミーで、1803年に芸術アカデミーに吸収されました。
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多数のヨーロッパ諸国がフランスの例にならいましたが、アメリカ合衆国も1894年から自国のアーティストをローマのアメリカン・アカデミーに迎えています。ドイツのアカデミーは18世紀以降、芸術家の間で急速に評価の高まった「ローマ賞」(Rompreis)を授与しています。フランスのように統一的なアカデミーと1つのアーティスト・イン・レジデンスをローマに設立する試みは、ドイツ語圏では小邦分立による利害の対立のため、当初は失敗に終わりました。こうして、ローマ賞受賞者は、自力でアトリエと宿泊先を手配せねばなりませんでした。19世紀初頭には、バイエルンのルードヴィヒ1世の居所であったヴィラ・マルタが、一時的にアーティストの交流の場となりました。
Foto: Karin Appolonia Müller
京都のヴィラ九条山では1992年からフランスのアーティストを受け入れています。ドイツからの奨学生は2011年以降京都滞在の恩恵に浴することになります。ゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川で、アーティストはプロジェクトを通じて支援を受けます。ここを拠点に、彼らは日本のアートシーンに触れ、故郷のアトリエから遠く離れて、展覧会、朗読会、コンサート、対話に参加できるのです。