発明:光学
探査機ロゼッタ‐彗星からの映像n
Max-Planckの研究者たちが開発し探査機に搭載した特殊なカメラが捉えた圧巻の映像が地球に送られます。宇宙を経由してデータが到着するまで、1回あたり28分20秒かかります。このように詳細な画像はこれまで誰も見たことがありません。最高に性能のよい望遠鏡を使っても地球から確認することはできないでしょう。
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星を背にした探査機ロゼッタ(Collage)
ナノスコープ
視覚の限界はどこにあるのでしょうか?1873年、ドイツの物理学者Ernst Abbeは、光学顕微鏡では、その顕鏡法に使われる可視光線の波長の半分の長さまでの詳細しか見られないことを理論的に示します。そのため物理学者たちは、光学顕微鏡の解像度は200ナノメートルが限界だろうと長い間信じていました。
ところが、1999年にはこの限界が破られます。ゲッティンゲンの物理学者Stefan Hellがわずか数ナノメートルの解像度で細部の観察が行えるSTED顕微鏡を開発します。その手法とは、観察対象である微小な構造に光を照射し、次に、その光の一部を2つ目として放射される特殊な光で再び消すのです。こうして、近傍の構造への過剰な照射を防ぐことができます。
1ナノメーターは10億分の1メートルに相当します。そのため、STED顕微鏡により、従来の光学顕微鏡に比べ数十倍から数百倍も高い感度で観察が行えるようになります。
» ビデオ“ナノスケールの世界への明るい兆し”
STED顕微鏡で見た細胞内のタンパク質構造
従来の顕微鏡で見た細胞内のタンパク質構造
顕微鏡と脳研究
私たちはどのように考え、感じ、学習しているのでしょうか?脳の構造と機能を精確に理解してこそ、これらの問いに答えることができます。そのためには、一つ一つの脳細胞およびその活動を見える状態にすることが不可欠です。生物物理学者であるWinfried Denkは、1980年代の終わりに光学顕微鏡検査法を2光子蛍光顕微鏡検査法へとさらに発展させます。
レーザーが放出する光子、すなわち光の粒子は、試料の中へ入り込むと、正確に定めたポイントに重なって、増感します。この方法により、研究者は、とりわけおよそ1ミリメートル幅の生きた脳組織を覗き込み、実際に“活動中の”脳を観察することができるのです。
これらの新たな光学顕微鏡技術は、まさに脳研究における選択肢を大きく広げています。電子顕微鏡検査法に比べ、これらの技術では生きた細胞や組織を調べることができるというのがその理由です。
2光子蛍光顕微鏡法で観察した、生きた網膜細胞
ウイルスの発見
エボラ、エイズ、天然痘、麻疹、インフルエンザ、数多くの危険な疾患はウイルスを介してうつります。それでも、研究者によって病原が同定されるまでには長い年月が費やされます。その原因は、ウイルスが細菌よりもはるかに小さいことにあります。従来の光学顕微鏡ではウイルスを見ることはできません。
1931年にドイツの物理学者Ernst Ruskaが電子顕微鏡を発明して以来、ナノスケールの世界を覗き込むことができるようになります。Ruskaは光の代わりに、波長の短い電子線を使います。医者である弟のHelmut Ruskaと共に、彼はウイルスを精確に観察し分類できた最初の物理学者となります。1986年に、Ernst Ruskaは自らの発明に対し、ノーベル物理学賞を受賞します。
現在の電子顕微鏡は0.1ナノメーターの解像度を達成し、これにより研究者はタンパク質の精密な分析などが行えるようになります。
電子顕微鏡とErnst Ruska、1955年頃
現在の電子顕微鏡
遥か彼方を見つめて
ベルリンの天文学者であるJohann Gottfried Galleは、1846年に海王星を発見します。その時Galleが使用した望遠鏡は当時の最高品質の中でも最高のものでした。この望遠鏡はバイエルン州の光学技術者Joseph von Fraunhoferの工房で作られたもので、19世紀初頭は、彼だけがシュリーレン法や衝撃波を使わず最高品質のレンズを製造することができていたのです。
現在の望遠鏡はその何倍にも性能を上げています。例えば、大型望遠鏡4台を結合したベリー・ラージ・テレスコープ(Very Large Telescope-VLT)では、月面上の車のヘッドライトさえも2つの光の点として確認することができます。現在Max-Planckの学者たちは、VLTを利用してミルキーウェイ(天の川銀河)の中心にあるブラックホールについて研究しています。
砂漠の澄んだ天空に広がる星々には、今にも手が届きそうです
チリのアタカマ砂漠にあるベリー・ラージ・テレスコープ(超大型望遠鏡‐VLT)