フランツ・カフカ没後100年記念企画
今年はプラハ生まれのドイツ語作家、フランツ・カフカ(1883年- 1924年)の没後100年にあたります。その作品は時を越え、様々な言語に翻訳され、世界中の人々に読み継がれてきました。人間存在の不条理をテーマにした作品群を残したことで知られるカフカ。人々はその世界の何に惹きつけられるのでしょうか。
日本では2022年に、代表作『変身』の新訳が出版されました(角川文庫)。本イベントでは、この新訳を取り上げ、翻訳を手掛けた川島隆氏(京都大学教授)と、俳優の造形力に定評のある大阪の劇団、エイチエムピー・シアターカンパニーの演出家、笠井友仁氏が、カフカとの出会いや作品の読み方など、各々の体験と感想を織り交ぜながら『変身』の魅力を語ります。同劇団の俳優、髙安美帆氏による朗読もあります。テンポのよい新訳の朗読と、カフカ研究者、演劇人ならではの視点で展開されるトークが、『変身』・カフカの新たな世界へと誘います。
サラリーマンのグレゴール・ザムザは、ある朝目覚めると、巨大な虫けらに変身していました ―「おれはどうなったんだ?」。彼はしかし、変身した理由を考えることもなく、思うように動かない自分の体と格闘しながら、出勤しなければともがきます。ザムザ家の人々は、息子・兄の身に起こったこの出来事に慌て、変身の理由は最後まで明らかにされることはなく、グレゴールは虫けらのまま死んでいきます―。
この奇妙な物語の何が読む人の心に刺さるのか、あるいは刺さらないのか。100年以上前に書かれた作品の中に、「家族のあり方」や「仕事のプレッシャー」、「介護」や「自立」といった現代社会に通じるテーマが浮かび上がります。「生きづらさ」が話題になることも多い昨今、あらためて目を向けたい作品です。
カフカ好きはもちろん、これまでカフカ作品に馴染みがなかったという方もぜひ、ご参加ください。
対談:
川島隆(京都大学教授)
笠井友仁(エイチエムピー・シアターカンパニー 演出家)
朗読:
髙安美帆(エイチエムピー・シアターカンパニー 俳優)
後援:日本独文学会京都支部
Takashi Kawashima
川島隆(京都大学教授)
文学研究者。京都府長岡京市生まれ。京都大学でドイツ文学を学ぶ。京都大学大学院文学研究科教授。専門はドイツ文学、ジェンダー論、メディア論。主な著書に『NHK「100分de名著」ブックス カフカ 変身――「弱さ」という巨大な力』(NHK出版)、『ハイジの生みの親ヨハンナ・シュピーリ』(青弓社)など。主な訳書にフランツ・カフカ『変身』(角川文庫)、『ポケットマスターピース01 カフカ』(共訳、集英社文庫)など。
Tomonori Kasai
笠井友仁(エイチエムピー・シアターカンパニー 演出家)
演出家。大阪府八尾市生まれ、宮城県仙台市出身。2001年に近畿大学文芸学部芸術学科舞台芸術専攻を卒業。その後、エイチエムピー・シアターカンパニーを結成し、演出を担当。主な演出作品にアイホール現代演劇レトロスペクティヴ『阿部定の犬』、メイシアタープロデュース公演 SHOW劇場『少年王國記』など。05年に若手演出家コンクール優秀賞、14年に文化庁芸術祭演劇部門新人賞、20年に大阪市咲くやこの花賞を受賞。近畿大学講師。
Miho Takayasu
髙安美帆(エイチエムピー・シアターカンパニー 俳優)
俳優・舞手・演出家。大阪府八尾市出身。8歳より浪速神楽をはじめる。近畿大学文芸学部芸術学科舞台芸術専攻卒。卒業後、エイチエムピー・シアターカンパニーに参加。奨学金を得てドイツへ演劇留学した事をキッカケに、2012年から個人活動を開始。「神楽」や「伝統芸能」「水墨画」をモチーフにした作品制作など、伝統と現代をつなぐプロジェクトを国内外の表現者たちと共に立ち上げている。第26回関西現代演劇俳優賞大賞受賞。
※関連イベント VR体験「変身 – VRwandlung」を開催します。
虫けらに変身した主人公グレゴール・ザムザの視点で、その世界を体験してみませんか?
2024年11月5日~30日、会場:ヴィラ鴨川
詳細はヴィラ鴨川ウェブサイトにて近日お知らせします。
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